会いたい。

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「りょおくんえろいめしてる」 「どんな目だよ、それ」 「りょおくんのめ」 ああくそ。 保て堪えろ理性! てゆーか、なんで 慧さんにこんな気持ち 抱かなきゃいけないんだ 慧くんは男で、 もちろん俺だって男で… 「…りょーおくん、 さびしーよお」 「っ……」 ちょ、やめ! 慧さんやめてやめて! ゆっくりと近付いてくる 慧くんは色気が怪しげに 溢れていて これ以上近づかれたら 堪えられる自信がない。 「…がまんしなくていーよ?」 「……っえ?」 「すきに、して?」 こてん、と傾げられた首 思わず、ごくりと 唾を飲み込む 反らしたりキョドらせて 見ていなかったのに 一度見てしまうと、 目が離せなくて 誘われるように 手を伸ばしてしまう だめだ、落ち着け! 心の中で必死に叫んでも 聞こえているのに、 聞こえなくて 「…さと、るさん」 「…りょおくん」 柔らかく触れた頬 指で唇をなぞる 少しだけ開かれている 唇に誘われるように 顔を近付けて 「…ん、」 あまりにも柔らかい その感触に思わず ちいさく声が漏れた とろんとした真っ黒な 瞳は水分を含み過ぎて うるうるで 今にもこぼれそ…え? 「ちょ、慧さ…」 「ご、め…」 ぽろぽろと流れる雫 まるでほんとうの 雨みたいに 止まることなく、 流れてた 「さ…慧くんごめん… お、おれ…俺」 やっと正気が戻ってきた 俺はただ恥ずかしくて 滅多に泣かない彼の 涙に動揺して なにやってんだよ、 と責めて顔を見ること ができなくて 下を向いて謝るしか できなかった 「…ごめん、」 「ちが…うの、」 弱々しい彼の声も、 自分を責めているだろう 俺を思っての彼の優しさだって そう思えて… ごめん、って それしか言えなかった  
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