大切な人へ

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がんばれ、って 言葉がきらいだった あの人はがんばってる のに… がんばれ、…って。 これ以上ムリさせるの? 彼は十分過ぎる くらいなのに そのがんばりも 知らないで …がんばれ? 「…亮ちゃん、 好きな人いるのかなあ」 「どうだろう。 そーゆう話聞かないね」 俺は言いたくないし あんまり言われたくもない だけど、俺の言葉能力が 低くて言葉が見つからなかったら がんばれしか でてこなかったら 俺はなんて言えばいい? 「こないださー… 可愛い女の子に話しかけられてた」 「スタッフの子?」 「たぶん。 あぁ、もう女になりたい」 「またまた そんなこと言って」 「だって俺が女なら 負けないもん」 イチは、可愛いからね 女の子になったら 亮ちゃんが好きそうな 顔になりそう 「顔がだめでも、 落としてやれる」 「すごいね、イチ」 「当たり前でしょ。 でも女の子だったらの話」 コクリ、 ゆっくりと口の中に 流れた炭酸はやけに 甘ったるくて 少し眉が寄る オススメのバーが あるって連れてきて くれたのに 本人は悲しそう …ほんとに連れてきたかったのは? 「…あの女の子、 亮ちゃん好きなんだと思う」 「…まだ、わからないじゃん」 「わかる。…わかるんだよ」 ずっとずっと、 見てきたから。 想いを寄せていたから 変化も、 君からの想いも、 いやと言うほど 感じ取れる 「…わかりたくなんか ないのにね」 イチの笑顔は泣いて いるようだった。 …イチ、 君の視線は、ほんとに あたたかいもので いとしい、 ってはじめて目だけで 伝わってきた ああ、すきなんだ だいすきなんだな って思ったんだよ。  
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