大切な人へ

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「…でも俺は亮ちゃんと どうなりたいとか、ないから」 「え?」 「イチのことほんとに 応援しっ……」 乾いた音が、 静まり返ったこの場に 伝わっていった 小さく聞こえた言葉で 彼を見る 彼は涙を溜めた瞳で、 俺を見ていた。 むかつく、 その想いをこれでもか ってくらい感じる 「そんなですきなんだ? 誰かにとられてもいいんですね」 「……とる、 とらないじゃ…なくてさ」 「真剣だと思ってた だから相談だってしたんです」 涙と照明のせいで きらきら輝く目 真剣だよ。 中途半端な気持ち なんかじゃない。 …だからこそ、 「…亮ちゃんには、 しあわせになって欲しいんだよ」 「だったらどーして」 俺は間違ってない。 好きな人にはしあわせに なってほしい。 そう思うことは 間違ってないのに 「あんたは間違ってる!」 亮ちゃんにしあわせに なって欲しいだけなのに 「さいってーだよ!」 …どうして。 「俺がもし亮ちゃんを むちゃくちゃに傷つけたら?」 あんただったら、 しあわせにできたかも 知れないのに 他人任せのしあわせ 願うなんてさ 「そーゆうことになって かまわないってこと?」 「…イチは、 亮ちゃん傷つけないよ」 「…そーゆう話じゃ」 叩かれた頬がやけに ピリピリと痛む イチは、ほんとうに 亮ちゃんがすきみたい なのに、ライバルに 怒るって…なんで? 自分がうまく行く チャンスが増えるのに  
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