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「あ、そうでした」
思い出したように萩原はニコッと笑って、顔を近付けてくる。
おでことおでこをくっつけて、「熱いですね」とわざとらしく言う。
「体温計で計れよ、ばーかっ」
ゴッツンと頭突きを食らわすと、萩原は目をギュッと閉じて痛みに耐えた。
とはいうものの、俺も痛い。
思わず、涙が出てしまうほどに。
「……先輩」
「な、なんだ?」
いつもより低い声に俺は身構えたが、遅かったらしい。
あれよ、あれよと押し倒される。
「痛かったんですけど」
「あ、ああ。俺も痛かった」
「慰謝料を要求します」
「は?」
気付くと、背中に手を回されていた。
ギュッと効果音がでるんじゃないかってくらい、力強く抱きしめられる。
「うー、うー!!」
離せ、ごらぁ!と言うが、全く言うことを聞かない。
ジタバタしてみたが、敢えなく撃沈。
嬉しそうな顔をしてみつめてくる萩原の表情に、俺は抵抗をするのをやめた。
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