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練習が終わり、皆が大浴場に行く中。
俺は一人寂しく自分の部屋でシャワーを浴びた。
鏡に映る、萩原がつけた跡。
困るけれど、少し嬉しかった。
アイツがくれるものは、食べ物ばかりだから。
もらったらすぐ食べてしまって、手元には何も残らない。
萩原が残した跡は、アイツの表情や声を瞬時に思い出せる。
思い出しただけで、なんでこんなにドキドキするんだろう。
自分自身の胸の鼓動の早さを収めるように、俺はシャワーを頭からかけ続けた。
(つうか、恋愛ってこんな感じだっけ。もっと、余裕がある感じじゃなかったか?)
女の子はかわいい。
コロコロ表情が変わるし、素直に感情をぶつけてくる。
抱きしめれば柔らかいし、とてもいい匂いがする。
「圭太くん、だいすき」
そう言ってくれるだけで、満足した。
他の男が言うみたいに、ヤルとかヤラナイとかそういう感情はあんまり湧かなかった。
楽しければ、それでよかった。
心も体も繋がりたい、なんてよく言うけれど、あんまピンとこない。
たくさんの女の子を抱いたけれど、どれも記憶に残っていない。
初体験ですら、だ。
思えば、それが女の子達に伝わったから振られたのかもしれない。
萩原が俺にしてきた、ひとつひとつのことは鮮明に思い出せるのに。
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