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気の抜けた笑みを浮かべ、アイツは暖簾をくぐってしまった。
……なんだよ。シカトしやがって。
「いたた、斎藤さん、俺の腕をそんな強く握らないで下さいよ」
気が付くと、長田くんの腕をガシッと握りしめていた。
俺は謝りながらも、萩原の様子が気になって仕方がなかった。
「……長田くん、俺、アイツに用があるからここで一旦待つわ」
「あ、はい。じゃあ、おやすみなさい。今日はお話できて楽しかったです」
丁寧にお辞儀をするのを見ると、育ちの良さが分かる。
俺は大股でマッサージ機に向かうと、ドカッと座った。
リモコンを持ち、背中の凝りをほぐすように指示をする。
ぐうぉん、ぐうぉん
マッサージ機はイタ気持ちいい箇所を刺激していく。
「やべええええ、きもちいいいい」
口を抑えないと、声が震えだしてかなり変人だ。
しばらくすると、ワックスで髪をまとめていない萩原の姿が見えた。
俺はドキドキしながら萩原をじっとみつめるが、全く気が付かない。
視線が一瞬こっちを向いたが、気にも留めずエレベーターに向かっていく。
……まさか、みぞおちに入れたので、マジ怒りしっちゃった?
俺は慌てて、萩原に駆け寄った。
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