1

23/26
前へ
/61ページ
次へ
「おいっ、さっきは悪かったな」 アイツのTシャツを軽く引っ張りながら言うと、萩原はきょとんとした顔をしていた。 「無視……すんなよ。風呂でもなんでも入ってやるから」 萩原の表情に戸惑いがある。 ……え、そんなに俺と仲直りするの嫌なのか? Tシャツを握る力を強くし、俺は俯いた。 チンッ エレベーターがきた音が響く。 萩原は俺の腕をグイッと掴み、エレベーターに連れ込まれた。 「先輩……反則です、そういうの」 壁に追いやられ、ぎゅっと抱きしめられた。 体が離された時に見たアイツの顔は、赤かった。 「俺、今コンタクト外しているんです」 … … ……まさか。 「あの、昔の写真見せたから分かると思うんですけど、俺、すごく目が悪いんです」 ……ああ、分厚い眼鏡してたな。確か。 「俺が貴方を無視するわけないじゃないですか」 そうっと頬を撫でられる。 エレベーターが目的地に着くまで、されるがままにした。 「じゃ、じゃあな」 俺は恥ずかしさのあまり、ダッシュで部屋に戻りたかった。 「明日、風呂楽しみにしてますね」 ……へ? .
/61ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1367人が本棚に入れています
本棚に追加