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宴会場のセッティングが終わり、ゾロゾロと先輩方が入ってきた。
その中に、あのひとはいない。
「飯島先輩、斎藤先輩は……」
「あー、アイツ寝ちまってさ。何しても起きないんだよ」
ポリッと頭をかきながら、飯島先輩は俺に部屋の鍵を渡した。
「萩原相手なら圭太も起きそうだ」
「え?」
「うちの部のオカンだからな。おまえ」
いつのまにか変な異名をつけられてしまった。
俺は鍵を受け取り、先輩のいる部屋へと向かう。
「お邪魔します」
ドアを開けると、さすが男の部屋と言うべきか。
荷物が散乱している。
その中で、先輩は仰向けになりながらスヤスヤと眠っていた。
部屋の鍵を締め、すぐさま近寄り彼の様子を窺う。
茶色の髪はワックスをつけていないせいか、いつもよりサラサラだ。
目が閉じられているせいか、睫毛が長いのがよく分かる。
「せーんぱい。宴会ですよ」
耳元で囁くと体を捩らせた。
「せーんぱい」
先輩の体の向きが俺の方になる。
無意識に反応しているとすれば、この上なくかわいい。
「……圭太さん」
普段呼べない名前を口にしてみる。
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