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「つぅ……」
全身に渡るチクチクとした痛みに少女は目を覚ました。
まだ頭も視界もハッキリとしない。ボンヤリと見える天井は見覚えのないコンクリート仕立てである。
「あら!せやぁない(大丈夫)?野々村満喜子さん」
野々村満喜子────
少女の名前である。
自分の名を呼ぶ方へ視線を送ると、白衣を着ている女性がそこに立っていた。どうやら看護婦の様である。名前を知っているのは、きっと胸の名札を見たのだろうと満喜子はボンヤリと思った。
「まだ寝とりんさい!熱もあるんじゃけぇ」
そう言えば、何となしに頭がボーっとして熱っぽい様な気怠さを感じる。
「ここは病院ですか?」
熱のせいか、満喜子は辿々しい口調でここが病院なのか確認を求めた。
「ここは臨時の救護所よ」
どう言う事なのだろうか?病院ではなく、臨時の救護所だと看護婦が言う。
何故に自分はそんな場所にいるのか、満喜子自身皆目見当も付かない。
満喜子は、身を起こして周囲を確認しようと、右手を踏ん張ろうとする。
ところがその右の腕に手応えがなく、上手く起き上がる事が出来ない。
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