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不思議に思いながらも自身の右手に目をやると、二の腕から先にあるべきものが、そっくりそのままなくなっていた。
「まだ無理したらイケンようね!あんたぁ腕がのぉなっとるんじゃけぇ!!」
既に看護婦の言葉は届いていなかった。
「な、何?どうなっとるん?」
何かを求める様に満喜子は周りを見渡して行く。
すると周囲には、皮膚が焼けただれた人や体中に巻かれた包帯から血を滲ませている人、ガラスが突き刺さって動く度にシャリシャリと音をさせている人など、とても生きているとは思えない人達がごった返していた。
血生臭く、熱気と臭気に満ちた空気に満喜子は不快感を覚える。
途端、右腕はそのなくなった事を主に訴えるかの様にジクジクと激しい痛みを伴い出す。
「ハァハァハァ……」
気が動転したのか、満喜子の呼吸は著しく乱れ始めた。
「せやぁない?しっかり気を持ちんさい!野々村満喜子さん!!」
看護婦の声が微かに聞こえる。満喜子は自我を辛うじて保つ事が出来た。
「う、うちは一体……」
腕がないと言う結果を知りつつも、満喜子は恐る恐る看護婦にその事を尋ねる。
「えぇね!あんたぁここに運ばれんさった時には、もう右手はのぉなっとったんよ……」
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