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空は晴れ渡り、空気が澄み切った何とも良い天気である。
その空模様と相俟(あいま)って何とも心地の良い長閑(のどか)な風景が広がる────
『満喜ちゃん相変わらず絵が上手じゃねぇ。これ、江波山じゃろ?上手ぅに描けてるねぇ!』
江波山から広がる風景を見事に捉えた満喜子の写生画へ覗き込んだ級友が褒め称える。
『ホンマじゃねぇ!さすがは絵描きさんの娘、うちらとは出来が違うねぇ!!』
別の級友も満喜子の絵を見て囃(はや)し立てる。
『はあ(もう)!千代ちゃんも信子ちゃんも、そがぁに誉めても何にも出んけぇね!』
千代や信子が誉めるのを嬉しく思いつつも、満喜子は照れ隠しに苦笑してみせる。
『満喜ちゃんは絵描きさんになりんさるじゃろ?』
『うん!うちはお父ちゃんみたいな絵描きさんになりたいんよ!』
千代の問いに満喜子は嬉しそうに笑顔で答える。
それ程満喜子は、自分の父、栄作が描く絵が大好きであった。
初夏の程良い薫風が三人の笑い声を乗せて長閑な江波の風景へ響いて行く────
「あっ!?」
不意に満喜子は目を覚ました。
どうやら、いつの間にか寝入ってしまったらしい。
「夢…かぁ……」
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