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「ハァハァ、一体いつまで狩り続ければいいのですか?」
「ほんの7体ほど仕留めれば今日のところは終わりですよ。
今のアンタなら簡単でしょうMr.R」
木々が生い茂った山奥で2人の青年は先ほどまで暴れ狂った巨体な鬼のような怪物を見つめて状況を確認していた。
1人は昔ながらの白い服装で右手の爪を長く鋭く尖らせそれに付いた怪物の血を払った。
もう1人はタキシードに身を包み、戦場を堪能していた。
どちらもこの場に相応しくない服装な上にその内1人は明らかに人間の域を超える力を持っていた。
「……ずっと前から気になっていたのですが」
「ほう?
何か鬼共について気付いた事があるのか?」
「戦闘のところは大した事はなくむしろこの力は良好に値します。
生前一体何があったのか、私が気になるのはただそれだけです」
――実のところ、彼は歴史上明治時代以降この世に“居ない”とされている。
タキシードの青年によると、彼自身は鬼と成り果て村を襲ったが自分の妻に始末されその死を満足して逝ったとされている。
だが、長い時を超え謎の処置を施され見事蘇生した代わりに記憶を失い鬼の力を得たのだ。
蘇生したばかりの頃は驚いたが、今では完全にその実力をコントロール出来るほど成長した。
「ここまでこれたのは貴方のおかげですが、まさか本当にこの力を使う日が来ようとは…」
「つくづく皮肉だなアンタ。
よほど神様に弄ばされてる奴なんてそうそういないぜ」
「全くです。
あのまま地獄を彷徨っていても良かったのに、何故もう一度人生をやり直させる機会を与えたのか。
力を得ればいずれわかると思っていましたが、未だにさっぱりです」
「まー良いじゃないか。
アンタの蘇生は気紛れだったからきっと何らかの役目があるんだろうよ」
「役目……ですか?」
「ああそうさ。
一度目の存在意義は孤高の美女を救い妻とした。
十分幸せを味わったからその報いとして鬼化し生を終えた。
例としてこういう風に神は人に幸福と悲劇を両立させ世界という脚本を楽しんでいるのさ。
だけど、そればっかりじゃ飽きるからイレギュラーを招待した」
それが……。
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