大石清「妹への手紙」

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戦況の悪化により、鹿児島県知覧のみであった特別攻撃隊の飛行場の補助として作られた万世基地では 昭和20年3月29日から終戦まで飛行第66戦隊、飛行第55戦隊が、一機、また一機と飛び立った。 同5月20日、大石清伍長が到着。 その数日後・・・ 次の遺書を整備担当であった大野沢威徳氏に預け、出撃し、 散華した。 なつかしい静(せい)ちゃん! おわかれの時がきました。 兄ちゃんはいよいよ出げきします。 この手紙がとどくころは、 沖なわの海に散っています。 思いがけない父、母の死で、 幼い静ちゃんを 一人のこしていくのは、 とてもかなしいですが、 ゆるして下さい。 兄ちゃんのかたみとして 静ちゃんの名であずけていた ゆうびん(郵便)通帳とハンコ、 これは静ちゃんが 女学校に上がるときに つかって下さい。 時計と軍刀も送ります。 これも 木下のおじさんにたのんで、 売ってお金にかえなさい。 兄ちゃんのかたみなどより、 これからの 静ちゃんの人生のほうが 大じなのです。 もうプロペラがまわっています。 さあ、出げきです。 では兄ちゃんは征きます。 泣くなよ静ちゃん。 がんばれ!
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