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この遺書を預かった大野沢威徳氏は次のような手紙を添えている。
大石静恵ちゃん、
突然、見知らぬ者からの手紙で
おどろかれたことと思います。
わたしは大石伍長どのの
飛行機がかりの兵隊です。
伍長どのは今日、
みごとに出げきされました。
そのとき、この手紙をわたしに
あづけて行かれました。
おとどけします。
伍長どのは、
静恵ちゃんのつくった人形を
大へん大事にしておられました。
いつも、
その小さな人形を飛行服の
背中に吊っておられました。
ほかの飛行兵の人は、
みんな腰や落下傘の縛帯の
胸にぶらさげているのですが、
伍長どのは、突入する時に
人形が怖がると可哀そうと
言っておんぶでもするように
背中に吊っておられました。
飛行機にのるため
走って行かれる時など、
その人形がゆらゆらと
すがりつくようにゆれて、
うしろからでも一目で、
あれが伍長どのと
すぐにわかりました。
伍長どのは、いつも
静恵ちゃんといっしょに居るつもりだったのでしょう。
同行二人。
仏さまのことばで、そう言います。
苦しいときも、さびしいときも、
ひとりぽっちではない。
いつも仏さまがそばにいて
はげましてくださる。
伍長どのの仏さまは、
きっと静恵ちゃんだったのでしょう。
けれど今日からは伍長どのが
静恵ちゃんの”仏さま”になって、
いつも見ていてくださいることと信じます。
伍長どのは勇かんに
敵の空母に体当たりされました。
静恵ちゃんも、
りっぱな兄さんに負けないよう、
元気を出して
勉強してください。
さようなら
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