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あれは恋だったんだろうか…。
一目惚れだったんだ―─―。
彼は生徒会長を務めていた。
純真な瞳をしている。
彼は誰にでも優しくて、生徒からは嫌う者などいなかった…。
皆にとって、そして僕にとって彼は「特別」なんだ。
生徒からは慕われ、先生からは頼りにされて、立場的にはそんな地位だからだけど、頭がよくスポーツが得意な彼、おまけにピアノも弾けるなんて、まさに「優等生」。
そして、彼は有名な家元の御子息で顔もいい。
でも、それは大きな誤解だったんだ―――
僕は、彼に告白した。
――――でも、すぐにフラれてしまったんだけど…。
彼「ごめん…。俺は君が思っているほど、たいしたことしかしてないんだ。理想をかかげることは、素晴らしいことだよ、でも俺は君の理想じゃない」
そう言って彼は断った。
それ以来から、僕は『ボク』として生きることにしたんだ。
『ボク』として…。
それは女を捨てること…―――。
男として生きること…。
恋愛感情を捨てるためにはどんなことをしても構わない覚悟だった。
女の心を捨てるためには、それしか手段はなかった。
学校の規則から破ろうが僕にとってはどうでもいいこと。彼はすれ違った時、僕を避けるような仕種をしたし目も合わさなくなった。
当然だろうね…告白をして揚句のはて、こんな格好をしているのだから。
同じ立場だったら、自分でもそうするだろう。
僕は一刻も早く彼のことを忘れるために、男のように振る舞った。
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