遠ゐ昔の想ひ出

3/3
前へ
/3ページ
次へ
そんなある日―――――― 「~~♪」 「御館様、今お帰りになられたのですか?」 「おぉ、幸村か。あぁ、今帰った。」 何故だか御館様が上機嫌である……… 「……?御館様、城下町で何か良いことがありましたか?」 「それがな、今度、城下町で会った娘をわしの女中として引き取ることにした。」 ほぅ……、御館様が娘を引き取る、しかも御自分の女中にまで………? どういうことだ…………? 「御館様、その娘はそんなに幼いのですか?」 俺はその娘……いや、その幼子を御自分の養子として引き取ったのだと思った。 「いいや、立派な女子であるぞ。御主と同じ年齢であろうかな。」 立派な女子……? しかも俺と同じ……? ま、まさか……! 「まさかとは思いますが…、御館様、その娘を女中として引き取った後、御自分の正室にしようとお考えですか?」 「鋭いな、幸村。そのつもりよ。」 ……なるほど。御館様についに正室が…。 しかし御館様にここまでさせる女子とは…… 一体どれほど魅力のある方なのか。 ……まぁ、御館様が幸せになるなら構わないのだが。 「そういえば、幸村。御主は妻を持たぬのか?」 「御館様、何度も申し上げているように俺には心に決めた方がいるのです。それ以外の女子には、拙者は興味が持てませぬ。」 俺はキッパリと答えた。 これは本当のことなのだから。 その相手こそ、昔出会った彼女、あの名前も思い出せない夢の中の女の子であり、もう会えぬような相手なのだ――――― 、
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加