第一章 第一話 終わりからの始まり

13/25
前へ
/178ページ
次へ
そんな木刀を振り回す日常の中、俺はふとした疑問が浮かんだ。 この浮かんだ疑問は本来もっと早く気付くべきなのだが……。 ”俺って死んだのに肉体どうなってるんだ?” つまり、死んだはずの俺に肉体などある筈もなく、現在は幽霊のようなものの筈なのに、物は食べられるし、木刀を振り回せるし、痛みも勿論感じる……。 つまり肉体もないのに、まるで肉体があるような現象に陥っている訳だ。 「という訳なんですが、ナギ分かりますか?」 「登君、私が考えてる事を読み取れる事を良い事に、喋る事を省略したね」 「だって読めるじゃないですか」 「……まぁいい。 えとその疑問を抱くのは最もだと思う。 というか遅いぐらいだね」 「遅かった理由は、色々急展開すぎて身近な事に気付かなかったからだと思います」 俺がサラッと言うと、ナギは苦笑いし、そして話し始めた。 「確かに、ここに来た時の登君の状態は幽霊と一緒だね。 正確に言うと、器の無い魂だけかな?」 「考えは合っていたと」 「まぁね。 じゃあお腹が空いたり物が持てたりする理由だけど、簡単に言うと、魂が肉体の代わりの器を持ったからかな?」 「は? 肉体以外?」 俺は自分の腕の皮を摘まんだり、引っ張ったりするが、普通の肉体にしか見えない……。 「いや、成分構造は失う前の肉体と同じだよ」 「じゃあ一体何が……。」 「ここ天界には神気という物が満ち溢れている」 ナギが神気と言うと、登はありえないと思いながら一つの仮説を立てた。 ”俺の魂が神気を集めて肉体を再び創った?” 「その通りだね。 本来出来る訳ないんだけどね」 「俺、軽く人間辞めてないですか?」 「うん、神気集めて体を再構成する魂なんて聞いた事ない。 まぁ、君に眠ってる6つの力の所為だろうね」 今一度言おう……。 こんな規格外の能力なんていらないから、さっさと輪廻転生させてください。 「うん、それは無理だね。 君の魂の一部みたいにくっついてるから、外すとなると君の魂消滅だね」 「畜生……」
/178ページ

最初のコメントを投稿しよう!

707人が本棚に入れています
本棚に追加