第一章 第一話 終わりからの始まり

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「というより登君は特別な力を得られて嬉しくないの? 私が言うのも何だけど、人間って他人より優秀な面を持ちたくなるものじゃないの?」 「まぁ否定はしないけど、俺は普通に生きていける分だけの力があればいいと思ってますから。 あ、別に無欲という訳じゃなくて、というか欲がない人間なんているんですか?」 「まぁ、もう登君は普通じゃなくなってるけどね。 後、欲がない人間なんていないだろうね。 欲が無くなったらそれは人間じゃない、ただの抜け殻だね」 答えに納得した登は、落ち込むと同時に溜息をついた…… 「はぁ……。 普通な人生を送りたかったなぁ」 「登君にとっての普通な人生とはなんだい?」 少し考えた後、俺は静かに答えた 「俺にとってかぁ。 ただ平凡に日々を生きて、恋人作って、社会で働いて、結婚して、孫に囲まれて死ぬですね。 世間一般では、まるでつまらない人生です」 「いいんじゃないか? 私は素晴らしいと思うぞ」 ナギと談笑していると、突然ナギが真剣な顔になった。 「すまない登君。 ちょっと仕事が出来てしまった。 話はまた今度だな」 「ナギの仕事って確か、輪廻転生でしたっけ?」 そう、ナギの仕事とは生きとし生けるものの輪廻転生である。 「そうなんだが、どうやら今回は異世界にチート転生させてくれ! というやつらしくてね。 パパッと有無を言わさずに輪廻転生の輪に組み込んでくるよ」 ナギは登に背を向けるとそのまま消えてしまった。 恐らく仕事場に向かったんだろう……。 「俺も力なんて持ってなかったらすぐに転生させてくれたんだろうなぁ……。 ……贅沢なのかもしれないけど、やっぱり俺はこんな力いらなかった……。 さっさと輪廻転生して、次の人生を歩みたかったな」 俺の独り言はその場の誰にも聞かれる事はなかった……。
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