第一章 第一話 終わりからの始まり

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呆然と立ち竦んでいると、きっと誰かが通報したのだろう。 遠くから救急車のサイレンが聴こえてきた。 「サイレン……、ってイタッ!!」 サイレンの音で現実に戻ったか、その時登は気付いたのだ。 腕や足、体にさっき飛んできたガラスの破面が刺さっているのを……。 「っつー……、何で俺までこんな目に……!!」 登が痛さに苦悶し歩けず近くの電柱を背に座り込むと、追突したトラックからガソリンが漏れ静かに誰にも気付かれない様に登に迫っていた。 そう、その事は登本人も気付いていなかった……。 「今日はトコトン運が無いな……。 納豆がゾンビ化してるし、体中誰かの血で真っ赤になるし、ガラスの破片が体中に刺さるし、これ確実に病院行きだな」 登が自身の運の無さに悲観してると、突如トラックから火が出たと思ったらドォォォン!! という爆音をたてて爆発し、登は爆風に耐え切れず横に倒れてしまった。 それと同時だろうか、登の足下へガソリンが到着したのは。 「うわぁっ!! 畜生……、今日という日ほど不幸な日はない!!」 周りが登に向けて何か言っているのが聴こえる……。 「少年、後ろ! 後ろ!!」 「……え?!」 バッと首だけ振り向くと其処には、凄いスピードで迫りくる火……。 そこで登は気付いたのだ、自分の周りがやけにガソリン臭いと。 「ははっ! 最悪だぁぁぁぁぁ!!!」 火は登に辿り着くと容赦なく焼いていくが、登はこの時不思議な事に全くと言っていい程熱さを感じなかった。 只々、目の前が暗くなっていくだけだった……。
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