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場所は移ってそこは広い広場のような場所。 そこには大勢の人だかりがあった。 中心には釣竿を池に垂らした金髪の男が居た。
「よし! かかった!」
「頑張って貴方!」
「パパ頑張って!」
「任せろミィナ、ステラ!! これ以上奴らの好き勝手にさせて堪るか!!」
パパと言われた男が目一杯の力を籠めて釣竿を引き上げるとザパァーン! という豪快な音をたてて何かが釣上げられたのであった。 その何かというのは言わずとしれた登であるが……。
「皆! 少年が釣れたぞーー!!」
その言葉を皮切りに、辺りでは歓喜に似た声が響き渡ったのであった。 そして釣上げられた登はというと……。
「……なんなんだ一体……」
登の小さい呟きみたいな言葉は、大勢の歓声に消され、誰の耳に入るわけでもなく、空しく空気に溶けるのであった。
そんなただ呆然とする登に近付く一人の男性……、そう登を一本釣りした張本人である金髪の男である。
「やぁ、危機一髪だったね」
「釣上げたのは貴方でしたか、おかげで変な空間に飲み込まれずに済みましたよ。 どうもありがとうございました」
ビショビショになった服のまま立ち上がり、軽く釣上げた男性に会釈をした。 そして今抱いている疑問を目の前の男性に問いかけた。
「取りあえず、ここ何処ですか?」
「君たちが言う、天国という奴かな?」
この日、この瞬間からだろう……。 登の普通の日常から真逆の日常となったのは。
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