第一章 第六話 王都

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どうやら牢屋は城の中に有る訳では無く。 城より少し離れた位置に作られており、スペースの問題と見栄えからなのかやはり地下牢だったみたいだ。 そして降が扉の前まで歩き扉を開けると、少し振りの太陽の光が登とマオの目に差し込む。 「眩しいな……」 「うむ……」 「二人ともこっちだ。 付いて来てくれ」 言われるがまま付いて行く二人は、途中訓練場らしい場所で兵士が訓練している姿、メイドが洗濯している姿、木の陰でサボっている兵士、読書をしている綺麗な服を着た物静かそうな少女、それを口説いているイケメンな青年……。 まぁ青年の話を全く聞いていない様子だけどな……。 まるで其処に何も居ないみたいにスルーしている。 「あの少女、凄まじいスルーだな……。 あんな目の前で口説かれているのに完全スルーしているぞ」 「本当じゃな。 妾なら五月蠅くて蹴っ飛ばすじゃろうな」 「……二人ともちょっと待っていてくれ」 「あぁ、別に構わないよ」 「行って来い。 妾達は見物しているからの!」 降はその言葉の後、”処分するか”っと呟いていた気がするが……って、降が青年に近付いて…… 青年が気付く前に顔面にハイキックか。 しかも炎纏っていた気がするぞ……。 と言うかあの青年凄い吹っ飛んだな。 訓練中の兵士の列に突っ込んだぞ! 「降があそこまでするって中々なさそうだな」 「そうじゃな! 一瞬じゃが降の目から明りが消えていたぐらいじゃったからの……」 「……ここからよく見えたな」 牢屋の扉前から少女の所までの距離、100mくらいである。 現在の登は一般人と同じくらいの力にセーブしているので見えなかった。 「さて、一体何を……」 登達の目の前で繰り広げられるのは、さっきまで無視していた少女が降に抱き着き物凄く甘えており、それを降が抱きしめ返し頭を撫でているという…… 「……恋人だったのかな?」 「ならばさっきの行動も理解できるかの? 何せ大事な彼女を守るためとかじゃろうし」 「もしくは妹とか?」 「その割にはキスしているがの」 「あ、本当だ。 降ちゃんと恋人居たのかぁ……。 あ、じゃあ船で言ってた静香って娘かな?」 「降にしてみれば、感動の再開じゃろうな」 二人を置いておき、降とその女性は暫くイチャイチャしていた……。 マオと登は観察に飽きたのか、アリの巣を降が戻って来るまで見ているのであった。
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