0.Since Yesterday

3/5
前へ
/16ページ
次へ
大振りのアーミーナイフが敵の臓腑を抉る。 まあ敵は人間では無いから、臓腑というよりは内燃機関と言った方が正確かもしれないが。 その敵は一機のシスターがパートナーと組んで作製した、言わば量産型シスターというべきロボット。 幾ら性能が自分達より劣るとはいえ、ロボットはロボット。 数で来られると単体で戦っている奴はジリ貧だ。 そうやって彼女はのし上がり、今ナイフを振るっているシスターは劣勢の極みにいる訳で。 金髪に所々黒色の混じったショートヘアの美女。 唇はカシスオレンジの様な色をしており、その側に小さな黒子がある。 たかがロボットなのにどうしてそこまでディテールに凝っているのか。 後に説明するが、それが彼女の「本来」の姿だからだ。 軍服に身を包み、二丁のアーミーナイフで敵と戦う。 彼女には夢があった。 だが、その夢は「今回」も叶いそうにない。 どうも彼女はパートナー運に恵まれてないみたいだ。 夢の方向は同じでも、中身はとんだ腰抜けで臆病者ばかり。 まあ無理も無い。 こんな非日常に対応出来る人間なんてそうそういる筈が無い。 劣勢になれば、パニックに陥ってガタガタ震えながら小便を漏らす連中ばかりだ。 あの時も、あの地球でも。 そうやって彼女は「負け続けて」きたのだ。 戦闘能力はシスターの中でも上位に位置するのに、だ。 次々に現われる敵を薙ぎながら彼女は溜め息を吐く。 「全く…全くキリが無い。なるほど、シスタージェニファーやシスターギーゼラが負ける訳だ」 彼女は自分を取り巻く敵達を睨む。 「彼女等が負けるなら…私も腹を括らねばなるまいな」 その時だった。 「ロォォォォォズ!加勢するよぉっ!」 ガトリング砲をぶっ放しながら、現われた赤毛のシスター。 「雑ぁ魚共があっ!その女を食っていいのはアタシだけなんだよぉっ!」 ガトリング掃射で包囲網の一角が破れる。 「トンズラするよっ、ローズ!雑魚の手で舞台から退場なんて寝覚めが悪過ぎる!そうじゃない?」 「シスタージル。まさか貴女が助勢してくれるなんてね。どういう風の吹き回しかしら?」 「煩いねっ!せっかく助けに来てやったのに何て口の聞き方よ!何なら…」 「いや、悪かった」 ローズはナイフで敵の首を撥ねながら言った。 「助勢、感謝する」
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加