1.TV Sky

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その日、俺は中古のレコードショップで掘り出し物を漁っていた。 CDショップ?細かい事は言わないでくれよ。 確かに買うのはCDさ。家にあるターンテーブルには蜘蛛の巣が張ってあるからね。 でも、俺が探してる掘り出し物ってのは、レコードがまだ全盛だった頃のアーティストのモノだ。 だからレコードショップでいいんだよ。 こういうのは気分の問題だからね。 お気に入りを何枚か見繕って、一枚か二枚は冒険をしてみる。 聞いた事の無いアーティストとか音楽雑誌の片隅に載ってるマイナーな連中のヤツをね。 こういうのは一種の博打だよね。 これは、ってモノに出会える事もあるし、一度だけ聴いて、俺じゃない御主人様の下に帰してやる時だってある。 当たった時はほんとに楽しい。 もう、次の給料日にはそのアーティストの既存の盤を全て買い求める位だ。 漫画やアニメだってそうでしょ? そうやって買い求めたモノを懐に抱えて、お気に入りの流行らない喫茶店にシケ込む。 BGMに今し方買った冒険アーティストのCDを流して貰うのさ。 これがデスメタルやノイズ、宗教音楽の類なら、タダでさえ客の来ない喫茶店の客足が更に遠のく。 そりゃそうさ。 ドアを開けて、いきなり男の奇声が耳に飛び込んできたら、殆どの奴は御邪魔しましたってなるよ。 でも俺はそんな我儘を聞いてくれるこの店を愛している。 そして、今この時がとても幸せだ。 俺の名前は五島悠紀夫。 親父の会社でエンジニアをやってる、洋楽好きな勤労青年だ。 どんな会社かって? 最近流行りのサーヴァント・アンドロイドを作っているイヴ・コーポレーションの下請け会社だ。 所謂召使ロボットって奴さ。 値段は車一台買う位の金額だ。 それで身の回りの世話をしてくれるなら、と案外需要があるんだ。 暴走とかそういう類の事故も起きてない事もあり、結構普及している。 会社は造形とメンテナンスを受け持っていて、俺はメンテナンスの部門で働いている。 まあ、俺の自己紹介はこれ位にしておこうか。 俺の事なんかより、これから起こる事の話を聞きたいだろうからね。 そう、あの日。 俺は喫茶店でマスターとダベった後、アパートに向かう所だったんだ。 ふと、空を見る。 瞬く間に空一面がTVの砂嵐の様に変化したんだ。
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