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日が暮れてから帰ると、部屋には既に明かりが点いていた。
無言のままドアを開けると、奥から軽い足音が近付いて来る。
「お帰りなさい」
出迎えた霄瓊の安心したような顔を見ながら、静嵐は眉をしかめた。
今日は随分帰りが早い。
普段なら、明るい内に家に帰っている事などほとんど無いのだが。
静嵐の考えに気付いたのか、霄瓊が慌てて口を開く。
「あ、あの、昨日また綻びを見付けましたから、そろそろまた向こうへ行くんじゃないかと思って早めに帰らせてもらったんですけど。でも帰って来たら静嵐がいなくて、もしかしたら一人で行ってしまったのかと思って」
言葉を探しながらたどたどしく話す様子は、年齢よりも大分幼く見える。
驚く程の強さを見せる時もあるのに。
「……そんな訳が無い」
忌々しいが、この少女がいなければ力を出せないのだ。
「行く為の準備をして来ただけだ」
「そ、そうですか。じゃあ、明日もお休みにしてもらって良かった」
静嵐は微笑む少女から目を逸らして言う。
「支度をしろ」
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