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着込んでいる丈夫で厚手の衣服は、肌を刺すような風もよく防ぐ。
そして、肌を焼く雨も。
静嵐と霄瓊は、街の中心地へとやって来た。
人の行き交う通りを避けながら、目指す場所へと歩む。
それはこの都会で、最初に綻びの出来た地。
高くそびえるビルの間を縫うように歩いて、突き当たりの路地で立ち止まる。
普段は静嵐によって固く綴じられ、何も入って来られないように誰にも気付かれないようにされている大きな綻び。
それを今、再び開く。
自らの中に流れ込む力を感じて、静嵐は綴じ合わされた所を指でなぞる。
本来ならコンクリートの壁がある筈の場所に、音も無く穴が開いた。
それを確かめてから、霄瓊の方へ手を差し出す。
小さな手がそっと重ねられると、無表情のまま細い体を引き寄せる。
同時に静嵐の背に大きな黒い翼が生え、近付いた二人を包み込んだ。
巻き上がる風に、漆黒の羽が辺りに舞う。
静嵐は霄瓊を腕で抱え、そのまま開いた綻びの中へ身を躍らせた。
足が地面から離れても、羽ばたく翼が二人を落とさない。
この翼が、いつも綻びの向こうへ導いてくれる。
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