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しばらくは目も開けていられない程の風が吹き付け、やがて収まると体が止まる。
ゆっくりと着地すると、そこは大きな瓦礫の上だった。
「……雨が降っていなくて、助かりましたね」
静嵐は空を見上げて言った霄瓊を無視して瓦礫を下り、歩き出す。
霄瓊はすぐに後ろを大人しく付いて行く。
此処は明らかについ先程までいた都会とは違った。
足元には砂が広がり、時折吹き抜ける風がそれをさらって行く。
壊れた建物の残骸が、あちこちにそのままになっている。
霄瓊は何度かあの綻びを抜けて静嵐と共にこの地に来ているが、それでも見る度に胸が痛む。
だから返事が無いのを分かっていても、先を行く背中に話し掛けてしまう。
「悲しいですよね。あの賑やかな都市が、将来はこうなってしまうなんて」
やはり返答は無く、霄瓊の言葉は独り言となって風に消えた。
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