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まだ崩れていない建物の方へと進んで行く。
激しい倒壊の中、そのビルだけはまだ原型を留めていた。
こうして外を歩いていると、此処で人が暮らしているとはとても思えない。
それでも人々は生きているのだ。
自然が自分達に牙を向ける環境でも、身を寄せ合いながら。
ビルの中に入っても、大きな瓦礫が通路を塞ぐように転がっている。
その間を縫いながら奥へと歩いて行くと、不意に人の気配がした。
「おっ、誰かと思ったら静嵐と霄瓊ちゃん!」
周囲の雰囲気におよそ似合わない脳天気な声と共に現れたのは、静嵐と同じ年齢位に見える若者だった。
「こんばんは、湧碕【ようき】さん」
霄瓊が礼儀正しく頭を下げると、湧碕は気さくに笑う。
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