10人が本棚に入れています
本棚に追加
しかし今夜は、しばらく躊躇った後で霄瓊が口を開いた。
「あの、静嵐【せいらん】」
呼び掛けると、その瞳だけが向けられる。
「何か、気になる記事がありましたか?」
「…………」
静嵐は何も言わずに箸を置き、傍らの新聞を開いて一つの記事を示した。
受け取って素早く目を走らせる。
「これは……」
「……ああ。恐らく間違いは無い」
「行くんですね?この記事の場所に」
その言葉に、静嵐が探るように霄瓊を見た。
「あ、勿論私も行きますから」
「…………」
「面倒くさいって考えているのは分かっていますけど、何かあった時に私がいないと貴方も困るでしょう?」
沈黙の後、静嵐は眼差しを鋭くして言う。
「それが面倒くさい」
憎しみの込もった瞳を向けられて、霄瓊は微かに息をついた。
「食事の後、出掛けましょう」
それだけを告げて、箸を持ち直す。
本当に、こんなに敵意を向けて来る相手が一緒では気が休まる時などあったものではない。
それでも、離れる事は出来ない。
あの時から、既に定めは動き出した。
彼と離れる事は出来ない。
最初のコメントを投稿しよう!