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建設途中のビルが並ぶ、夜になるとほとんど人通りの無い場所で、大きな生き物の影を見たという冗談ののような記事だ。
それを信じてこの寒い中わざわざ足を運ぶ物好きはいないだろう。
自分達の他には。
静嵐は街灯で照らされる景色に、鋭く視線を巡らせる。
少し離れた場所で霄瓊が息を弾ませながら真剣に周囲を見ているのが視界に入り、意図的に目を逸らした。
周りはコンクリートや剥き出しの鉄骨ばかりの殺風景な場所に、その姿はあまりに不釣り合いで。
だからこそ、目に焼き付いてしまう。
引き込んだのは自分で、今更胸の痛みなど感じる筈も無いけれど。
その時、何かが崩れるような音が耳に届いた。
霄瓊が付いて来るのを確認もせずに走り出し、立ち入り禁止の看板を無視してビルの間に入り込む。
そこに、ビルの影に潜むようにそれはいた。
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