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視線を前へ、生き物の方へ戻して静嵐が思ったのと、霄瓊の凛とした声が響いたのはほとんど同時だった。
「静嵐、契約の元に命じます。あれを、倒して!」
解き放たれたように体が動き出す。
この身に宿る力は、印を持つ者の命令が無くては使えない。
発揮出来る力の強さも、命じる者がどれ程それを受け止め制して行けるかに掛かっている。
そして意外な事に、霄瓊はこれまでに静嵐が契約して来た誰よりも強かった。
見た目はか細くて、何かあれば折れてしまいそうな位弱く思えるのに。
静嵐が命令を果たすのにどれ程の力が必要かを正確に判断して、その大きな力の鞘となる。
認めたくはないが、契約者としては優秀に違いない。
今も、揺らがない彼女の意志が静嵐に力を与える。
巨大な鳥のような生き物は、静嵐の一撃を受けて地に倒れた。
しかし跳躍した静嵐が着地するのとほぼ同時に、その輪郭は徐々に溶け始める。
二人が見守る中で、生物は空気に溶け込むように姿を無くし、やがて完全に見えなくなった。
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