10人が本棚に入れています
本棚に追加
霄瓊がそっと歩み寄り、一見何も無い空間を見詰める。
「……此処に綻びが?」
「ああ」
静嵐は頷いて指で空中の一点を示し、そこからゆっくりと下ろした。
「此処にある」
「綴じられますか」
一応質問の形だが、これも命令だ。
先程よりも抑えられた力が体の内に放たれる。
「当然だ」
言い切って、指でなぞった空中を睨む。
もう二度と此処からあんな生き物が入り込まないよう、力を綻びに注ぎ込んで綴じ合わせる。
本来あるべき姿に。
「……終わった」
短く告げると、霄瓊が小さく息をつくのが分かった。
力を使う方よりも制する方が気力を使うから、疲れるのは当然だ。
それでも霄瓊は静嵐に向かって頭を下げ、微笑んで言う。
「有り難うございます」
最初のコメントを投稿しよう!