星空メモリー

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先に言ってしまおう、コイツは十九年前に死んだのだ。 当時十歳だったコイツは、川に落ちて死んだ。 幼い子の悲劇的な事故、誰もが心を痛め、死んだその子供を想って涙を流した。 状況が一変したのは、死んだ子供の机の中から、長い文章が見つかった時だった。 内容を見た親は絶句した。 ――――遺書だった。 つまり、子供は自殺だったのだ。 その子供の同級生だった俺はまだ幼く、その話を聞いたのは中学に入ってからだった。 あまり詳しいことは分からなかったが、遺言の内容は、“世界に絶望したから命を絶つことにした”という感じだったらしい。 それ以外のことは分からない。 詳しい内容も、家族がどうなったのかも、全てが長い時間を経て人々の記憶から薄れ消えていった。 ただ、俺だけは記憶の片隅でその子供の存在を消し去ることができないでいた。 その子供が、二十九にもなった俺の目の前で、昔と何一つ変わらない姿でハサミを振り回して世界を語っている。 絶望したはずの世界を、ちぐはぐな妄想で語り続ける。 それでどうしてコイツが、今更俺の前に化けて出てくるんだ?
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