星空メモリー

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さて、まずはことの発端から思い出してみようか。 思い出そうと努力する必要もない。 何故ならその日は二年間付き合った彼女にフラれた、忘れたくても忘れられない人生最悪の一夜だったからだ。 “会社で好きな人ができました、ごめんなさい、別れて下さい” 彼女の声色で脳内に永久リピート。 心優しい彼女だったから、申し訳なさそうに眉を下げている姿が容易に想像できた。 責めようにも責められない、そもそも責める気など起きなかったが、 起きなかったんですが (仕事中に、しかもメールで振るのは勘弁していただきたかったなぁ…友子…) メール一通で片付けられる程度の関係だったのかよ、俺達の二年間は。 ただでさえガラスのハートなのに、メールという形の残る手法で俺の手を断ち切るなんて、友子お前そんなサディスティックな一面を持っていたのか。 ―――――どん底。 俺達が愛し合ったはずであろう二年間は一通のメールによってその一単語に化けた。 そのせいで仕事の出来も最悪だった。 俺を目の敵にする上司に散々苛められ、帰路に着く頃にはもう日もとっぷり暮れていた。 もうそりゃあクタクタでしたよ。 石を蹴飛ばし、空き缶を蹴飛ばし、電柱を蹴飛ばし、猫に少し癒されながら俺はいつもと違う通りを歩いていた。 途中でコンビニに寄ってビールとつまみを持てる分だけ買って、向かう先は公園近くの裏山だった。 草木が生い茂った緩やかな坂道を上っていくと、少し開けた場所に出る。 そこからは遠くの街が一望できるし、運が良ければ星や月が見える。 雑草だらけの湿った地面に座るとどこか懐かしい気分になるし、夜の冷たい空気が鼻をさす感じも好きだった。 こういうことを口に出すのは中学で卒業したのだが、たまに言ってしまう。 これには気心の知れた友人にさえも。“ナルシストだ”、と言われる始末だ。 だから女にモテないんだ、という貰っても嬉しくないオマケも付いてくる。 とにもかくにも、そこが俺のお気に入りの場所だった。 満身創痍、心身共にズタボロだった俺は真っ直ぐ家に帰る気すら起きず、その場所で好きなだけ酒を飲んで飲んで飲みまくってやろうと坂を登っていた。
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