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ずっと、自制してきたのに…。
流れ去るネオンをぼんやりと見つめて、もうすぐこの時間が終わる事に少しの寂しさを感じていると、不意に左肩に凭れたままの小嶋が呟く。
「……佐倉くんちに行きたい」
「………え?」
一瞬、寝言か聞き間違いだと思った。
だが、下から見上げる小嶋の真剣な眼差しを感じ、そうではない事に気付く。
「キス……嬉しかった。
もうずっと、佐倉くんは私を女としては見てくれへんて…思てたから…」
消え入りそうな彼女の言葉を聞いて、僕の中で何かが弾け飛んだ。
「運転手さん、すみません。
行き先、浪速区役所に変えてもらえます?」
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