最終章

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しかし、テラス部分にある奥まった席に彼女達の姿を捉えた途端、僕の脚は勝手に動き出していた。 彼女達の顔をまともに見るのは、一緒に住んでいた6歳の頃以来。 画面を通してはその成長を見続けてきたが、実際目の当たりにすると感慨無量になった。 焦る気持ちとは裏腹に、声は全く出ず、黙って彼女達の居る席へと歩みを進めて行った。 「お父さん!」 声を掛けてくれたのは妹のヒナの方だった。 彼女達は顔はソックリだけれど、頬にあるほくろの有無で容易に区別がつく。 遅れて姉のモナが立ち上がったが、彼女には笑顔はなく、少し緊張しているように思えた。 昔からそうだった。 どちらかと言えばモナは母親、ヒナは僕になついていた。 .
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