最終章

22/32
前へ
/159ページ
次へ
玄関ドアを開けると、小嶋がスリッパを鳴らしながら駆け寄ってくる。 「お帰り!えらい…早かったね」 表情から何かを読み取ったのか、小嶋はそう言って僕を両腕で包み込んだ。 「うん…でも逢えて嬉しかった。 娘達も元気そうだったし…」 「そう……よかった…」 頭の上から優しく包み込んでくれるような小嶋の声に、ホッと息を落とす。 安らげる場所がある。 それがどんなに素晴らしい事なのか、この時肌で感じた僕は、気持ちを切り替えて顔を上げた。 「蒼太は?もう帰ってる?」 「さっき帰ってきてんけど、また母が連れ出してしもたわ…」 「どこに行った?」 「早めの夕食、外で食べて、そのあと映画観るって言ってたな~」 「じゃあ…行こ?」 「どこに?」 「ベット」 僕は小嶋の手を引き、寝室のドアを開けた。 .
/159ページ

最初のコメントを投稿しよう!

234人が本棚に入れています
本棚に追加