プロローグ

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「…………」  幻魔の一族を束ねる朱雀の城の王、ルイ・ヴァイスは落ち着きなく玉座の間をウロウロ、ウロウロとしている。  ここは人間達の住む世界とは少し違った、幻界と呼ばれる場所。幻魔と呼ばれる、魔力の高い一族が住んでいる。  幻魔は外見は人間と変わらないが、その潜在魔力は人間とは比べ物にならない。  魔力は魔法を使うのに必要な力。魔力が高ければその分、強力な魔法を使う事が出来る。 「ルイ、もう少し落ち着かない?」  ルイの伯父にあたるシーズ・ヴァイスが苦笑いをしながらそう尋ねると「すみません、落ち着けません……」とルイは何故かシーズに謝ってしまう。 「ダメだこりゃ……。いくら初めての子どもとはいえ、もう少し落ち着けばいいものを……」  シーズの弟であり、ルイの父親であるデュラン・ヴァイスが呆れたように苦笑する。 「そ、そんな事言われましても……」 「生まれました! お生まれになりました!!」  侍女が一人、慌てた様子で玉座の間に入ってくる。 「!!」  すぐにルイは王妃・アーリアの元へ向かった。 「お疲れさま、アーリア。よく、頑張ってくれた……」  ルイは愛しの王妃アーリア・ヴァイスの頭を撫でてそう言う。 「ええ……。それより、ほら、見て。私達の子ども…………」  アーリアは疲れきった顔で微笑んでみせ、抱いていた赤ちゃんをルイに抱かせる。ルイはよく泣くその男の子を嬉しそうに、愛しそうに見つめる。 「可愛い子どもだな……。目元がアーリアにそっくりだ」 「あなたったら…。ねぇ、名前、考えたんだけど……『リュカ』ってどうかしら…………?」 「『リュカ』か……。うん、優しそうな名前だ」  ルイとアーリアは幼い我が子を、目を細めて見つめながらそう話し合う。 「きっと優しい子に育ってくれるわ。だって、私達の子だもの」 「そうだな、きっとアーリアに似て優しく気配りの出来る子になるな……。よし、今日からお前の名前は『リュカ』だ!」  ルイはそう言って、まだ泣き続ける我が子を天高く掲げた…………。
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