序文

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 数学というのは記号論理学であって、人に説明する力と論理的思考力を身に付けるために学習するものなのですよ。  こう言ったのは、俺のクラスで数学Ⅱを教える老齢の男性教師だ。  確かに数学で論理力を養成することもできよう。  しかし、論理力を鍛えるのに数学が最も適しているとは思えない。現に、数学は暗記教科だと妄信している生徒もあまた存在する。  また、公式さえ覚えればある程度対処できてしまう事実もある。三角比の概念を理解していなくても、「咲いたコスモスコスモス咲いた」で点数は稼げるのだ。  つまり、純粋に論理力を求めるならば数学ではいけない。論理学とか、そのような教科を設置すべきだ(あるいはハリイ・ケメルマンの『九マイルは遠すぎる』を読ませるのもいいかもしれない)。  論理について充分な教育を受けられなかった俺は、中学生時代、論理の持つ力を信じられないでいた。
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