オルゴールの話

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木々に囲まれ、ぽっかりと空いた空間。 そこに小さな小屋があって… 「………」 何かに呼ばれるようにその小屋に向かって歩いていく。 小屋に近付くにつれて呼んでいる何かの音がはっきりしてくる。 ―――オルゴール 勝手に入るのはいけない、と頭でわかっていながらその意思とは裏腹に手はドアを開けていた。 「誰も…いない…?」 小屋の中を見渡すが人の気配は無く、ただオルゴールが一つ、鳴り続けている。 「でも…何か音が変だなぁ…」 オルゴールの置いてある台に近付き、一人音を奏で続けるオルゴールに触れる。 その時、頭の中に電流が走ったような感覚がした。 「陸路を辿る…日が落ちれば陸風が私達を撫でる… あの風は海に向かうのか…蒼茫たる我が故郷…」 口が、喉が、心が、歌の一説のようなものを口ずさむ。 段々とそれがどんな歌だったか思い出すように、しっかりとリズムと音程をとって歌う。同じ歌を、繰り返して。 するとオルゴールが、私の歌に合わせるように音を紡ぎだした。 ゆっくりと音が重なり始め、やがて音が一つになった。 「ふぅ…」 なぜかどっと疲れた気がする。 でも心は、パズルのピースがはまった時みたいな嬉しさと満足感で満たされている。 「いらっしゃい。」 扉が閉まる音と聞き覚えのある優しげな声に振り向くと彼が居た。 あ…勝手に上がっちゃった…。 「ご、ごめんなさい」 「ん?いいよ。勝手に家を空けてたのは僕だし…」
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