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そう苦笑する彼に私はずっと気になっていた事を聞いた。
「あなた、お名前は…?」
初めまして。シエル・アヴァレット・レイニです。
昨日はオルゴールが気になってすっかり自己紹介を忘れてた。
しかも互いに。
「ジェシ、うん、改めましてよろしく」
「はい、」と柔らかな笑みを湛えて僕の差し出した手を色白な手が握り返す。
「オルゴール、直りますか?」
「直る。大丈夫だよ。」
とても大切なんだろうな。声色で感じ取れる。
そんな事を考えながら鳴り止んでいる机のオルゴールを手に取りネジを回す。
「あれ…」
「?」
「ねぇ、君、これに触った?」
「え…」と一瞬ジェシは固まってそれから慌てて触ってないと言った。
「ただ…」
「…?」
ちょっと気まずそうに口を開いた彼女の言葉の続きを待つ。
「一緒に…歌いました」
一瞬僕はキョトンとしてそれから「あぁ、なるほど」と一人で納得した。
「つまり、君は……」
「…?」
途中で言葉を止めた僕を訝し気に見る。
何でもないよ、と言うと腑に落ちなさそうに、でも彼女は頷いてくれた。
「あの…オルゴールの修理代…いくらかかりますか?」
少し間を空けて、しかし僕が続きを言わないと悟ったのか彼女はそう切り出した。
「うーん…まだ深部まで見れてないから何とも…」
そんな曖昧な応えをすると彼女は不安気に「高すぎたら払えなくて…」と、小さな声で言う。
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