嘘つきゲーム

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俺の名前は秋山深二。 年齢は27歳。今は特に決まった仕事には就いていない。 大学院では主に、犯罪心理学、社会心理学、人間行動学なんてものを研究してきた。 あまり大きな声では言えないが、裏社会では伝説の天才詐欺師とよばれた時期もある。 駆け引きや騙し合いのプロフェッショナル。それが今の俺の肩書きだ。 ある日、謎の事務局から、【世界一の嘘つきを決める大会】の開催を告知する書類が届いた。 俺の得意分野だ。この機会を逃す手はない。 大会の参加費はかなりの高額だった。俺は今まで貯めてきた金のほとんどをそれに費やした。 しかし、優勝賞金はそれを補ってはるかにあまりある。おそらく一生を豪遊しても、まだかなりのお釣りがくるだろう。 その大会が今日、この島で行われる。 参加者は既に幾人か集まっていた。 ざっと見渡してみる。 どいつもこいつも一癖も二癖もありそうな奴らばかりだ。 まあ、俺の相手じゃないがな。 ん? あれは確か……。 あいつはかつて世間を騒がした伝説の怪盗。 警察に予告状を送りつけ、盗みの際には決して誰も傷つけない鮮やかな手口。……まさかこんな大物が来ているとは。 こいつは要注意だな。 いや、待て。 まだ、ほかにもいるぞ! あのじいさんは警視庁の最終兵器。 どんな迷宮入りになるかと思われた難事件もたちどころに解決してきた、プロファイリングの鬼だ。 あっちに座っている女は、数々の名作を生み出してきたミステリー作家。 巧妙に張り巡らされた伏線、複雑なトリックは常に読者の予想を上回る。 ほかにも…… 悪徳業者! 結婚詐欺師! 予言者! それに、政治家! どいつもこいつも並の嘘つきとは格が違う。超一流の嘘つきばかりだ。 おや。トロそうな女も一人いるようだが。 まあ、それはさておき。この大会、少しは楽しめそうだな。 しかし……、それにしても妙だな。 もう、大会の開始時刻は2時間もオーバーしている。 いったい事務局側は何をやっているんだ? Fin
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