0人が本棚に入れています
本棚に追加
「それなぁに?治」
女の子の一人が権道の胸元を指差しながら言ってきた。
「これは階級だよ。これが減れば減るほど偉くなれるんだぜ」
ニヤリと笑って得意気に権道は女の子へと返す。
「じゃあ治は下ッ端だな」
最後の一人の男の子がバカにしたようにそう言ってきた。
「ハァ?いったなこのガキ」
「うわぁ逃げろ!」
子供たちは一斉に治から逃げるように立ち去った。
「――ったく。アイツらは元気だけが取り柄だな」
呆れたように権道は言うと市葉の方へ向き直った。
「今日は特別よ。貴方が来たからかもしれないわ」
市葉は微笑んだまま、権道にそう言ってくる。
「……」
権道はちょっとだけバツが悪そうに顔を伏せる。
「……ごめんなさい。貴方は貴方の道をしっかりと歩むことを決めたのだから、こんなことを言って困らせたらダメね。本当に私ったら」
市葉はちょっとだけ困ったように笑っていた。
「……市葉先生、すずらん園はさ、俺の大切な場所だから。それはどんなになっても変わらないから」
遠くを見つめながら、権道はまるで自分にも言い聞かせるようにして市葉に言った。
最初のコメントを投稿しよう!