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「貴方、この子の名はなんにいたしませう」 細(さい)は疲れた様子で布団に横たわつてゐたが、隣で眠る我が子にたつぷりと愛情のある眼差しを送つてゐた。 「さうだな……燕はどうだらうか?」 「燕……さう云へば、さへづりが聞えませんね」 私は細の言葉に驚き、急いで縁側へ駆け出した。 巣には一羽も残つてゐなかつた。 「どうせだつたら、巣立つ所を見てみたいものだつたな」 背後からは、今生まれたばかりだといふのに、力強い泣き声が聞えてきた。
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