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我が家の軒下に燕の巣が出来た。 それは梅雨が明けず、やたらと雨ばかりが続く季節だつたと記憶してゐる。 長男はやうやく五歳になつたところで、下の子はまだ細(さい)の腹の中にゐた。 そのせいもあつてか、ピイピイと鳴く声が、いとほしく聞こえ、晴れ間が覗く日に限つては、暇さへあれば、縁側に寝転び様子を見てゐた。 燕の親は忙しなく飛び立つては、子供達に餌を与へ、休むことなく大空へと羽ばたいてゆく。 「まるで、大時計の振り子のやうだな」 細は私のことを「まあ、何時までご覧になつていても、飽きないことですこと」とやや皮肉まじりに云つた。 「おそらく、腹の子が生まれる前に巣立つてしまうんだ。それまでの間よくよく観察していたいのさ」
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