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いよいよ夏がやつてきて、細(さい)も臨月を迎へた。
すくすくと育つてゆく腹の子と同じやうに、燕の子供たちもまた、一回り大きくなつていつた。
ピイピイと声を上げるだけでよくも、あれほど大きくなれるものだと感心するほどであつた。
「これほど鳴かれてはうるさくてたまりませんね」
細は額から流れる汗を拭いながら云つた。
「なに、もうしばらくの辛抱だらう。直にこの子達も飛び立つてしまうさ」
細は、ちやぶ台に手をついて、重さうな腹を抱へながら立ちあがつた。
さて、長男も燕が気になつてゐたやうで、「ぼくも近くで見たい」と云つてきた。
そこで私は物置から梯子をひつぱり出し、壁際に立てかけた。
丁度よい具合に燕の巣はすぐ間近で見ることができた。
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