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私は長男を抱へ、一歩一歩梯子をよじ登つた。
「貴方、気をつけてくださいよ」
「あゝ、分かつてゐるさ」
実のところ、私も間近で見てみたかつたのだ。
高いところが怖いのか、私の服をしつかりと握り締めて長男は大人しく私の腕の中に収まつてゐた。
梯子を登る度に、一層小鳥達の声が大きくなつてゆく。
「ほら見てごらん」
長男は燕の方を向いた。
その瞳はみるみる輝いていく。
「お父さん、かわいらしいね」
「あゝさうだね」
巣もまた、よくもと関心するほど、細かい枝と泥のやうなもので、編みこまれてゐた。
中では黒い小さな鳥が大きな口を開けて、餌を待つてゐた。
私達が近づいたせいで、もしかすると、母親が来たと思つたのかも知れない。
小鳥達の声が先ほどとは比べ物にならないほど耳に響いてきた。
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