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「さあさ、もうそこから降りたらどうですか?」
細(さい)の掛け声に、しぶしぶ私達は巣を離れた。
間もなく、燕の親は戻つてきて、子供たちの口へと餌を運び、空へ飛び立つていつた。
近いうちに再び登るだらうと、梯子はそのまゝ壁に立てかけておいたが、案の定、私はすつかり燕の魅力に取り憑かれ、夜、こつそり寝床から起き上がり、そおつと巣を覗きに行つた。
昼間とは打つて変わつて、鳥達はすやすやと眠つてゐた。
梯子を登る時も、私は細心の注意を払つて、音を立てないやうに、一段ずつ足をかけた。
だが、思つたやうにはいかず、木の梯子は軋み、その音が辺りにこだまする。
「これは参つたな」
とは云つてみたが、どんな障害も私の好奇心に勝ることはなかつた。
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