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燕の親は一番前で、子供たちを隠すやうに、巣と平行になつてゐた。
こんな小さな動物でさへも、母性といふものはあるのだなあと、関心してしまふ。
私はまた音を立てながら、梯子を降り、細(さい)の隣に腰を下ろした。
「どうかなさつたのですか?」
「起こしてしまつたか? 済まない」
細は私に背を向けたまゝ話してゐた。
大きな腹のせいで、寝返りを打つのが難しいらしい。
「いゝえ。たまたま目が覚めてしまつたのです」
「さうか」
暗がりの中、細の腹を撫でた。
「貴方、こんな夜中では、この子も寝てゐませう」
「それもさうだな」
あの燕の親子のやうに、腹の子も動きはなかつた。
とても静かな夜だつた。
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