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さう思つたところに、親燕が餌をくわへてきた。 だが、一羽いなくなつたことには、気にも留めず、また素早く去つて行った。 「どうしたものか」 私は下を確認しつゝ、梯子を降りた。 そこに、チリンと鈴の音が聞えてきた。 なんだらうと、その音がする方を見れば、茶色い寅猫が、何か黒い物体をくわへてゐるではないか。 あゝ、なんといふことか。 それは紛れもない、あの燕の雛であつた。 私は沸々と怒りがにじみ出てきて、近くに転がつてゐた石ころを手に取り、猫めがけて投げつけた。 小石は足から一寸ほど逸れたが、猫は驚いて垣根の間から身をねじり込み、雛をくわへたままどこかへ行つてしまつた。
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