4 自分をコントロールするトリック

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_  この富豪は、鏡によって自己を客観視し、鏡の中にいるもう1人の自分に対して語りかけたのである。  この行為は、心理学的に見ても理に叶っている。  と言うのは、自己コントロールの原則は、第一に自分を客観視出来るかどうかと言う事だからである。  この事は、自己コントロール能力の極めて低い幼児とか精神異常者等の行動を観察していると、実に良く分かる。  私がやっている心理コンサルティングで面接する患者の中でも、重症者は必ずと言って良い程、自分を客観視出来なくなってしまっているのだ。  良く「自分は精神障害者ではないかと悩む人は、本当の精神障害者ではない。」と言われるが、これは全くその通りである。  逆に重症の精神病者は、決まって、「自分は異常ではない。人が皆で自分の事を精神障害者扱いするのだ。」と言う意味の事を言う。  自分の中にのめり込んでしまって、外から自分を客観視出来なくなってきた証拠である。  この自己コントロールの原則は、色々な形で応用されている。  例えば、サイコ・ドラマと言って、ノイローゼ患者に自分以外の人間の役を与えて自由に芝居をさせ、自分の外から物を考えるキッカケを与えてやる方法、文章や絵で自分の悩みを表現させ、自分を一旦外へ表出して、それを観察・評価される方法等がその典型例である。 _
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